名古屋地方検察庁 様

                                                   告 発 状

 平成21年4月21日

                  

告発人 

                                        愛知県豊橋市賀茂町字石城寺4番地の6

     寺本 泰之

                             他4名

                       被告発人 

    愛知県名古屋市中区三の丸三丁目12
  
  愛知県庁職員781人   但し氏名不詳

    (詳しくは表1に記載)

                                                          

 

告発の趣旨

 

被告発人781人は平成13年度から20年度までの間に、業者に架空取引を指示し、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成しました。また、国庫補助金事業の公金を対象外の賃金や旅費に支払うなどして、愛知県の公金14億8,972万6千円を不正に流用しました。また、携帯音楽プレーヤー、職員用コーヒー、ゲーム機など業務に関係ないものを購入し、私的流用しております。この行為は補助金適正化法に違反し、虚偽公文書作成罪(刑法156条)及び同行使罪(同158条)、私文書偽造罪(刑法1591項)及び同行使罪(同161条)、詐欺罪(刑法2461項)にあたるので被告発人の781人の処罰を求めるため告発します。

罪状については平成21年2月26日付けで愛知県が作成した「不適正な会計処理に関する全庁調査報告書」の第3章全庁調査結果(8ページから23ページ)に明らかにされていますので証拠として提出します(証拠資料1:以下「調査報告書」という)。

告発の事実

 

1、被告発人781人は、調査報告書にあるように不適正な会計処理を行った愛知県職員です。

被告発人の名前は愛知県民に対して公開されていないため知ることができません。名前は名古屋地方検察庁を通して判明していただくようにお願い致します。

 

2、「不適正な経理処理」でいう「預け金」、「一括払い」、「差し替え」、「翌年度納入」、「前年度納入」を会計検査委員は以下のように定義しております(「調査報告書」4ページ)。

「預け金」:業者に架空取引を指示するなどして、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、当該支払金を業者に預け金として保有させて、後日、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させるなどしていたもの。

「一括払い」:支出負担行為の正規の経理処理を行なわないまま、随時、業者に物品を納入させた上で、後日、納入された物品とは異なる物品の請求書等を提出させて、これらの物品が納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を一括して支払うなどしていたもの

「差し替え」:業者に虚偽の請求書等を提出させて、契約した物品が納入されないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、実際には契約した物品とは異なる物品に差し替えて納入させていたもの

「翌年度納入」:物品が翌年度以降に納入されていたのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より前の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの

「前年度納入」:物品が前年度以前に納入されていたのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より後の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの

 

以上から「預け金」、「一括払い」、「差し替え」、「翌年度納入」、「前年度納入」は明らかに「公文書偽造」、「詐取」にあたります。また、国庫補助金の対象外使用は「補助金適正化法」違反であることは明らかです。また平成20年10月31日の「経理適正化外部委員会 会議録」(証拠資料2)5ページから7ページに亘って、経理適正化推進チームである湯山建設部長も「不適正な経理処理」の違法性について明らかにしています。

当該「不適正な経理処理」に関わったとされた781人が法律違反を犯したことは明白です。

 県職員OBを含めればさらに多くの職員が違法行為をしていることは十分推測できますが、告発人が証拠を持って告発できる人間は781人ということです。

 

3、ところが愛知県は、「不適正な経理処理」という「経理手続き上の問題」としているにすぎません。「調査報告書」36ページでは、「不適正な経理処理に係る処分者数」781人のうち「戒告」を49人に留めたに過ぎず、「返金」することで今回の裏金事件を終えようとしています。この行為は法治国家である日本社会では断じて納得できず、官の犯罪を組織的に隠蔽し、守ろうとする愛知県の姿勢は看過できません。

 

4、私たち告発人は平成21年4月2日付で「愛知県裏金問題に対する公開質問状」を提出しました(証拠資料3)。簡潔にして分かりやすい質問により、愛知県知事の裏金問題に対する認識を具体的に、庶民に分かりやすく応えるよう求めました。そして、その回答を同年4月9日付で受け取りました(証拠資料4)。愛知県は、告発人の求めに一切答えず「事件性の有無は警察、または検察に聞け」の内容でありました。警察や検察が動かないならば、これら裏金は「犯罪」ではないことになります。全く法が機能しない社会になります。

 

5、自治体の裏金問題は、1990年代半ば、東京、北海道、三重、宮城、福岡、秋田等全国各地で次々と起こりました。愛知県は、平成18年度に岐阜県で裏金が発覚し、社会的問題になっていたときも、「裏金はない」と公言し続けてきました。公言しながら、実は今日まで裏金作りを行なっていたのです。過去にカラ出張、カラ飲食が疑われたことがありながら、東三河高等技術専門校ではカラ出張が行われ3年間で100万円がプールされていたことが今回判明しました。これらの例からも愛知県職員のコンプライアンスの欠如は甚だしく、さらに「経理上の問題」として事件性がないことを強調しているところから、犯罪意識はさらさら持っていないことがわかりました。愛知県には今や自浄能力はありません。この状態を野放しにしたならば、愛知県は無法自治体になります。

 

6、公務員の不正は民間業者にも不正行為を強要することになります。悪は速やかにはびこり、社会全体がモラルハザード化します。実際に、食品偽装、不法投棄、郵送料詐欺等々が起きております。人間社会の規範は信賞必罰でなければなりません。「泥棒をしても返せばいい」というようなことがこの法治国家日本でまかり通っていいはずがありません。この国は法治国家であり、何人も法の下に平等でなくてはならない。愛知県の裏金問題が、事件性はないとして片付けられ、公務員の長年に亘る組織犯罪は法に問われないというようなことが、この日本社会に断じてあってはいかんのです。

  この日本が法治国家であることを証明するために、司法の判断を求めて刑事告発を致します。

表1  被告発人(氏名不詳)

平成21年2月26日愛知県作成「不適正な経理処理に関する全庁調査報告書」36ページにある

不適正な経理処理に係る処分を受けた781人を被告発人とする

 

区分

戒告

文書訓戒

口頭訓戒

所属長厳重注意

部長級

24

部次長級

15

58

29

課長級

30

229

110

50

課長補佐級

 

124

 

86

主査級

 

主任級

 

 

注:現在の職級で計上

以下は 省略

証拠資料1:平成21年2月26日愛知県作成「不適正な経理処理に関する全庁調査報告書」の

コピー

証拠資料2平成20年10月31日愛知県作成の「経理適正化外部委員会 会議録」のコピー

証拠資料3:平成21年4月2日付告発人作成「愛知県裏金問題に対する公開質問状」のコピー

証拠資料4:平成21年4月9日付愛知県作成「公開質問状に関する回答について」のコピー

 

参考資料:今回の裏金問題を報せる新聞記事

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