伊吹春夫さんが語る食料自給率の裏側(一部です)
補助金が農業の構造を壊している。
さて、食料自給率が40%では国民が栄養失調や飢えで困っているのでしょうか。
テレビの番組でも○○店の△△がおいしい・・。とかミシュランの★の数が話題の中心ですね。
●・厚労省がH20年4月に発表した平成18年の国民健康・栄養調査の概要によると
20才以上の摂取エネルギーは1905Kcalです。
これを元にカロリーベースの食料自給率を計算すれば、
(1016÷1905)x100≒53.3% となり、国産で半分以上をまかなっているのです。
しかも厚労省の発表ではメタボと糖尿・高脂血症が問題視されています。
つまり、どちらかと言えば栄養過剰が問題となっています。
●・私は、40年以上も東三河地方の農業を生産者と消費者の真ん中から見てきました。
昨今の農家は「採算の取れる農作物」が見つからないので耕作放棄(みあわせ)をしていると
見ています。 この見解は全国に共通していると言って過言でないと思います。、
2002年7月に農機メーカー主催の研究会で北海道日高地方を訪れた時です。
100ha規模の広大な優良農地を持つ篤農家を訪問し、 「北海道で、夏場に耕地が休んでいるのはなぜですか?」と聴きました。。
すると、
「変な物を作るより補助金だけもらってる方が採算がいい」という一言でした。
残念な事ですが、農業行政の補助金は稲作の減反達成率を基準に分配される構造になっています。
米つくりをやめて大豆や麦を作れば高額な補助金がもらえることになっていますが、
その補助金の額は減反した水田の面積比例で配分されます。
(公式には、何処にもそんな事は記載されていませんが・・)
従って、国産大豆を単独作物として規模拡大することは不可能な構造になっています。
◆・稲作の減反と補助金の関係を上手に説明した「PDF」を添付しましたので御覧下さい。
ゲタとかナラシとか独特の用語が実態をよく表現しています。
しかし、農村の構造を御存知ない方には、難解な図表かも知れません。
●・農業の形態は異なりますが東三河地方でも、秋冬作のキャベツやブロッコリーを終えた畑は
多くの場合「休耕状態」で次の作付けを待っています。
太陽や水(豊川用水)に恵まれ、地理的条件や農業機械も揃っているのに農家は夏作(なつさく)を
しません。 昭和の時代はスイカ・プリンスメロンを代表とする露地メロン・スイートコーン・枝豆・落花生などが栽
培されていました。 ところが昨今では、それらの多くが熊本以南の南九州に押されっ放しとなっています。
地豆(ジマメ)と呼ばれていた落花生などは、国産品そのものが「黄色のダイヤ」になりつつあります。
夏は暑いから・・と昼寝で体力を養い、次の秋冬野菜の作付けを待っている農家も多い。 実は、それが黒字経営の認定農業者の姿です。
怠けているのではありません。夏作は資材や農薬代金がかさむ割に売上金額が少ない、
つまり利益率が悪いからです。
国産農産物の多くがグローバル経済下では、国際競争と産地間競争でしのぎを削っています。
円高は輸出産業に痛手であるばかりでなく、自給率向上をめざす日本農業にとっても見えない大きな
壁となっています。 穀物の国際相場もファンドが手仕舞いしたので適正水準に戻っています。
海外穀物の値下りと円高は、消費者にとっては「ダブル恩恵」であるはずなのです。
しかし、農水省はインチキ自給率を誇大に宣伝し
◆・日本の農業は大変だ
◆・このままでは農業後継者が絶えてしまう。
◆・食料防衛戦略を展開しなければ、国民が飢えることになる。
という三段論法で、農水予算の確保作戦を展開しているのが目下の農業行政だと思います。
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