精霊バッタの死   07.10.15

    夏の季節の終わりのこの季節には、このまちでは2度目の草刈が始まる。
    昨日まで河川敷で緑を競い合い青々とした夏草たちはあえなく刈り取られ、今は砂漠色だ。
    住処を追われた虫たちは、どこかへ避難したのだろうか?
    野草も虫たちも、自ら己を選ぶことなくこの世に生まれ生きている。
    それら純粋な命そのものは人の命となんら変わるものではないはずだ。
    
    考えてみれば野草は地球の産毛、虫たちは地球の一番のリサイクル者だ。
    人間にとってそんなに迷惑なのだろうか?
    丸裸になった土手を見ながら、毎年のように私は思う。
    とその目の前で・・・・

    朝倉川に沿って車を西に向かって走らせていた。
    携帯電話が鳴り、私は車を左端に寄せて停めた。
    通話中のこと、大きな一匹の精霊バッタが片足を引きずりながら道路を渡っている。
    住処を追われたのだろうか?
    次の住処を探しているのだろうか?
    引きずる足は、思うに任せず動きが鈍い。早くわたらねばと思っていた。
    
    疲れたのか!バッタは道路の真ん中で止まってしまった。
    そのとき、一台の車が走りぬけた。運悪く・・・。
    まともにバッタは前輪後輪の下敷きに。

    精霊バッタの命は消えた。
    私は逃がしてやることが出来たはずだ。
                                          
    

 


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