1、豊橋市は平成25年8月5日を開札日として「豊橋市民病院放射線治療施設等整備に伴う基本設計及び実施設計業務(以下「本件委託業務」という)」の入札を行った。本件工事入札には失格判断基準を導入されている。5社が参加し2社が辞退した。入札結果は表(1)の通りであった。
・豊橋市市民病院管理課入札結果(事実証明書1)から請求人が表にまとめた。 2、本件委託業務入札の違法性について ⑴「地方自治法第2条14項」及び「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第1条」に違反 ①本件委託業務入札にあたり、豊橋市は失格判断基準を導入した。当該制度は予定価格から一定割合を下回った場合、低入札価格調査を行わず自動失格にする制度である。したがって役所が設定した失格判断基準価格を1円下回っても失格になる不当な制度である。健全な業者にとっては受注の阻害要因になる。また当該制度によって落札価格が高額になり、歳出が増えることから住民にとっては負担増になる。したがってこのような公益性のない制度を導入するに当たっては住民サイドに立った慎重な検討と住民への説明が求められる。ところが豊橋市は「低入札価格調査制度の実効性を高めるため」を理由にのべるだけで平成25年6月1日から委託業務にも当該制度を導入した(事実証明書2)。 ② 請求人の本件基準導入前の委託業務入札結果の調査によれば、これまで豊橋市の委託業務に関して行われた低入札価格調査では問題は1つもなかった(事実証明書3)。水道施設整備変更認可設計業務(開札日平成24年8月24日)では予定価格25,460,000円に対して落札率27.4%にあたる7,000,000万円で落札されているが、これでも適正な履行が成されると判断され、事実適正に履行された。 ③ 以上①,②から、本件委託業務の落札者は本来ならば株式会社綜企画設計名古屋支店となり落札額は37,500,000円となる。したがって豊橋住民は3,430万円を不当に負担させられた。 ④ 現在までにどこからも失格判断基準導入の要望が業者よりないところからしても本件委託業務に失格判断基準を導入したことは、地方自治法第2条14項「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」に違反している。また「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第1条に定める「公共工事に対する国民の信頼の確保とこれを請け負う建設業の健全な発達を図ることを目的とする。」とする目的を逸脱した価格だけで自動失格にする不当な入札制度の導入である。 ⑵ 前記⑴より地方財政法第4条第1項に定める「その目的を達成するための必要且つ最少の限度」に反し、違法な公金の支出に該当する。 以上より以下の措置を求める。 なお、口頭陳述の機会を求める。 【求める措置】 監査委員は、 1、本件委託業務で株式会社山下設計中部支社へ支出された71,800,000円のうち3,430万円は違法な支出であるので返還するよう豊橋市長に勧告すること。 上記の通り、地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。 豊橋市監査委員 殿
事実証明書 (すべて写し) 1、豊橋市民病院放射線治療施設等整備に伴う基本設計及び実施設計業務入札結果(豊橋市作成) 2、「建設工事等における入札制度における主な改正点等について」(豊橋市作成) 3、これまでの豊橋市における委託業務の入札結果とその低入札価格調査の結果 資料(豊橋市作成) |
意見陳述書 平成26年5月20日(火) 監査請求人 寺本 泰之 平成26年4月24日付で行いました「豊橋市民病院放射線治療施設等整備に伴う基本設計及び実施設計業務(以下「本件委託業務」という)」に関する監査請求について以下の意見を述べます。 1、地方自治法施行令第167条の10第2項について(資料1) 地方自治上施行令第167条の10第2項は「 普通地方公共団体の長は、一般競争入札により工事又は製造その他についての請負の契約を締結しようとする場合において、当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、あらかじめ最低制限価格を設けて、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格をもつて申込みをした者のうち最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とすることができる」と定めている。 ところで、最低制限価格と失格判断基準は、価格のみで自動失格にする同質の制度である。これまで豊橋市においてはダンピングや手抜き工事の事例は一度もなく、業界から「失格判断基準導入」の要望も一切ない。また過去の低入札価格調査資料からも、入札価格が予定価格の20%~30%台でも低入札調査15項目の審査を踏まえて適正な契約履行可能という調査結果を得て、契約され契約履行で完結されていることが判明できる。 2、公共事業の入札及び契約の適正化の促進に関する法律について(資料2) 第3条 公共工事の入札及び契約については、次に掲げるところにより、その適正化が図られなければならない。 一 入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性が確保されること。 二 入札に参加しようとし、又は契約の相手方になろうとする者の間の公正な競争が促進されること。 と定めている。 3、豊橋市の低入札価格調査について(資料3) 低入札価格調査においては次の15項目について、入札者からの事情聴取、関係機関への紹介等の調査を行っている。過去の低入札価格調査の事例は次に掲げる⑴~⒂すべてをクリアーして適正契約履行可能となり、豊橋市と契約を行っている。業務は全うされている。 ・豊橋市が定める調査事項 ⑴ その価格により入札した理由 ⑵ 契約対象工事付近における手持ち工事の状況 ⑶ 契約対象工事に関連する手持ち工事の状況 ⑷ 契約対象工事箇所と入札者の事務所、倉庫等との関連(地理的条件) ⑸ 手持資材の状況 ⑹ 資材購入先及び購入先と入札者の関係 ⑺ 手持機械数の状況 ⑻ 労務者の具体的供給見通し ⑼ 過去に施工した公共工事名および発注者 ⑽ 経営内容 ⑾ ⑴から⑽までの事情聴取した結果についての調査確認 ⑿ ⑼の公共事業の成績状況 ⒀ 経営状況(取引金融機関、保証会社等への紹介を行う。) ⒁ 信用状況(建設業法違反の有無、賃金不払いの状況、下請代金の支払い遅延状 況、その他) ⒂ その他必要な事項 4、まとめ 実勢価格を反映していない、上限下限の価格を設定して調査もなく自動失格にする失格判断基準制度は欠陥制度であり、前述した法令1,2に違反している。本件委託業務は不当な入札により落札者が決定されているので、不当に支払われた公金は返還されるべきである。 企業イノベーションの進歩に即しない入札制度は入札不調や官製談合等の不祥事を誘発する原因となっている。同時に企業努力が報われず血税のムダ遣いになることから住民に過大な負担を課すことになる。(資料4) 以上から失格判断基準制度は早急に見直されるべきである。 事実証明として資料1~4を添付する。 |