平成19年(行ウ)第82号 豊橋市議会議員選挙公営費返還請求事件

原告    寺本 泰之

被告    豊橋市長 早川 勝

意見陳述

平成19年11月19日

寺本泰之(豊橋市議)

名古屋地方裁判所

民事第9部     御中

 

はじめに、私は市民オンブズマンとして市民運動を進めてきましたが、平成19年度の豊橋市議選挙において「一人はほしいオンブズマン議員」で立候補しました。多くのご支援を得て上位で当選させていただきました。そして521日、社会正義を訴え続け非業の死を遂げた国会議員石井紘基さんの名前をいただいて、一人会派「紘基会」を設立し、住民の付託に応えるべく議員活動をしております。

 

私は本件監査請求より2ヶ月前の7月にも同じように「選挙用ポスター作成公費負担の返還を求める監査請求をしております。この監査請求につきましては400人を超える請求人が集まりました。この監査請求も「違法性があるとはいえない。適正である」ということで棄却となりました。監査委員は本来地方公共団体の事務の執行を厳しく監視し、住民の利益のために機能するべき機関のはずです。ところが、この監査請求に対して行なわれた調査は全くお手盛りの調査であって、それは調査といえるものではありませんでした。 この調査内容を見て私は唖然としました。その調査内容の一つの例をあげますと、

「ポスター作成業者「Hi看板屋」に対してポスター用紙は30,000円で十分できるが用紙代請求額が128、500円になっているがどのようにお考えかお聞かせください」という調査票を送っているに過ぎない。そして、作成業者は「弊社の材料費紙代128,500円は妥当な金額だと考えております」というだけの回答で、それをもって「適正」と監査委員は判断しています。監査委員は本来業者の帳簿を調べることや他の業者から聞き取り調査をする権限を持っているにもかかわらず、それらの調査を一切行なっておりません。豊橋市の監査委員は監査委員として全く機能しておりません。

 

 

私は8年ほど前から選挙公営費、特に選挙ポスター費の公費負担が市価の3〜5倍の高い上限額55万円余の設定を問題にしてきました。私はこれまでに3回の市議選挙に立候補して、選挙ポスターをその度に作成しております。3回とも16万円で作成しました。ところが豊橋市市議選候補者の多くが満額近くの55万円を請求しておりました。選挙管理委員会に選挙ポスターの作成費の上限を適正額に変えるように何度も要望してまいりましたが、当局の回答は常に「現行金額は適正であると考えています」だけでした。

ところで、選挙公営制度は町村では実施されておりません。個人負担です。豊橋市の隣町、小坂井町では、立候補者一人当たり平均12万円で選挙ポスターを作成しています。最少の経費で最大の効果をあげるとする地方自治法2条14項の精神を欠き、不正水増し請求する人たちが議会にあまりにも多いことを知りました。この国の政官の不祥事、その下にある民間企業も汚染されている原因は議会にあると、私は認識します。

 

この国は議会制民主主義国家です。議会はこの国の要です。あらゆる行政プランを市民に代わって市政・国政のチェックをして議決・執行されます。議会はいわば市政・国政のコックピットといえる機関です。その議会人となる第1歩が選挙です。その選挙のとき市民に自己PRするために作成するのが選挙ポスターです。その選挙ポスター作成費を水増し請求するような立候補が大多数ではこの国の公正・公平など望めません。

諺に「政治は風、大衆は草である。よい風を吹かせば草はそちらへなびく」とあります。今の日本社会の現状を見ると、まさにその諺がいう通りの実態です。政治の腐敗により政官の不祥事は尽きず、民間企業による不法投棄をはじめ、偽装表示補助金詐欺等々絶えることがありません。大変な社会現象です。国の要である議会が本来の公正公平なチェック機能を果たしていたならば、HIVC型肝炎などで命をなくし、今なお病で苦しむ人々や、地位や名誉を得ながらも晩節を汚し罪人として家族を悲しませるようなことは、相当防ぐことができたのでは無かろうかと私は思います。

歴史小説家の司馬遼太郎さんが亡くなる1ヶ月前から口癖のように奥さんに言っておられたことばは「このままではこの国は必ず亡びる」でした。今生きる大人は次世代にもっと責任を持つべきです。

終わりに孔子のことばを引用させてもらいます。「過ちとは、過ちて改めざる これすなわち過ちという」。モラル高き日本となることを願います。


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