愛知県職員措置請求書

請求の要旨
  1、愛知県では「愛知県議会の議員及び愛知県知事の選挙における自動車の使用及びポスターの作成の公営    に関する条例(以下「本条例」という)」で選挙用ポスター作成費を公費で負担することとしている。1枚あたり    の作成単価及び作成枚数は、それぞれア及びイによる計算式で、公費負担となる限度が設けられている。

ア  当該選挙区におけるポスター掲示場の数が500以下である場合

  (301,875円+510円48銭×ポスター掲示場数)÷ポスター掲示場数=作成単価の限度
 イ 当該選挙区におけるポスター掲示場の数が500を越える場合

 (557,115円+26円73銭×(ポスター掲示場数―500))÷ポスター掲示場数=作成単価の限度

(ア、イのいずれも1円未満の端数があるときは切り上げ)

この計算によれば作成単価は、多くの選挙区で2000円を超えてしまう(表1)。また4000円を超える選挙区もある。愛知県では、この作成単価限度額にポスター掲示場数を乗じた額をさらに2倍した額が、ポスター作成費に対する公費負担額の上限になる。したがってポスター作成費の公費負担の上限額は、市場価格とはかけ離れた、一般市民には想像できないほどの高額になっている。現在全国各地でこの選挙用ポスター作成費の公費負担が問題になっている。その理由は市場価格を異常に逸脱して高く設定されているポスター作成費に対して、上限額いっぱいに請求する立候補者とその請求額をチェックすることなく漫然と公金を支払う地方自治体に対して、一般市民は全く納得できないところにある。選挙公営制度のない町村では、例えば小坂井町選挙にみる価格で作成されている(表2)。これらの事実から市民はポスター作成費にどのくらいかかるかは分かっているのだ。また、ポスター作成枚数をポスター掲示場数の2倍とする理由は、選挙期間中に候補者が貼り替えることを想定している、と愛知県では述べているが、請求人が調べたところ、選挙期間中にポスターを張り替えた候補者はいない。選挙公営制度の目的自体は、選挙費用の資力に乏しい者も立候補しやすくしようとするもので、必要以上に金をかけていいとするものではない。地域の実情に合った公営制度にすべきである、と総務省も通達しているはずである。その努力をすることなく、機械的に上限額を設定し、本条例に定める「ポスター作成費のみの公費負担」であるかどうかをチェックしないまま公金を支払った本件担当職員の怠慢は看過できない。

2、選挙期間中ポスターを張り替えた、とする立候補者もいない。にもかかわらずポスター作成費の公費負担上限額の満額の100%を請求している候補者が26人、99.8〜99.9%請求が6人、90.0〜99.7%請求が18人いる。(表3)。

岐阜県山県市では選挙用ポスター作成費の不正請求に対する監査請求が市民団体によって起こされた。これを受けて山県市では、「山県市選挙公営制度における不正請求問題調査委員会」が設置されその報告書(別紙4)が出されている。その報告書によれば、選挙公営の対象枚数135枚(山県市)に対して、ポスター作成費として実際かかった費用は5万円から19万円でしかなかった、と報告している。ある印刷業者は1000枚までは枚数いかんにかかわらず請負額は同じであると、報告書の中で証言している。これら考えても、1000枚のポスター作成費に実勢価格は20万円を超えることはない。作成枚数が増えたところで、ポスターの用紙代25円(一番高いとされる用紙エポFGSの価格)が増えるだけで、1000枚のポスター作成に25万円を超えることはない、という証言を複数の印刷業者から請求人は得ている。高く見積もっても愛知県が設定した上限額の50%を超えることはない。したがって表3にある上限額の90%を超える公費負担請求は過大請求であることは明々白々である。実情を調べることもなく、漫然と公金を支払った本件支払担当職員は地方財政法第4条1項(地方公共団体の経費は、その目的を達成するための、必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。)に違反している。

  3、本件の違法・不当理由

以上1,2より愛知県が、選挙用ポスター作成費のみに支払われる本件条例に違反し、違法・不当に公金を支払ったことは明らかである。不当でありという特段の疑念を抱かしめる請求であるにもかかわらず、単に上限額以下であることだけをチェックし、漫然と愛知県民の税金を支払った本件担当職員の職務怠慢は問われるべきである。その損失の補填を求めようとしない愛知県は財産管理を怠っている。また、過大請求した印刷業者は、不当利得しているのだから愛知県に返還すべきである。

 昨年、平成19年の港区での燃料代返還の事例や新聞報道を踏まえて、過大請求の疑いがもたれる他候補が公費負担請求を見直し返還することを期待していた。しかし、年が明けても一向にその気配はない。また、愛知県がこれら候補者に愛知県の損失を補填するように返還を求めることもしない。また、本年2月4日選挙用自動車の燃料代公費負担の過大請求の監査を求めたところ続々と過大請求を認め返還している(別紙5)。ここからは愛知県選挙管理委員会が2007年4月執行の愛知県議選において立候補者や業者に、正確に選挙公営制度を伝えていないか、あるいは業者の意図的な過大請求などの違法・不当な公金支出があったことを容易に判断できる。したがってここに監査請求することにした。

   以上より監査委員に対し以下のことを求める。
     
                                    

 監査委員は、2007年4月に執行された愛知県議選立候補者(別表3にあげた1〜50)のポスター作成を契約した印刷業者から帳簿、納品書等を提出させチェックし、印刷業者からの聞き取りをしてください。そして架空請求やポスター作成費以外の請求など違法・不当な請求について神田愛知県知事に対し、不当利得分の金額を愛知県に返還させるように求めるなどして愛知県の損失がなくなるように、必要な措置を講ずるように勧告してください。             

 

上記の通り、地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添えて、必要な措置を請求します。

 

愛知県監査委員 殿                   

                                               平成20年2月27日                                                                                    
監査請求人      寺本 泰之

証拠資料

     1、表1:愛知県議会議員一般選挙ポスター作成単価限度額の写し    
 2、表2:平成19年度執行宝飯郡小坂井町選挙のポスター作成費一覧表
(請求人が小坂井町役場に開示請求した選挙収支報告書より調べて作成したもの)


 3、表3:平成19年度執行愛知県議会選挙のポスター作成費負担額一覧表 
(請求人が愛知県選挙管理委員会にある選挙収支報告書から調べて作成したもの)


 4、別紙4:山県市選挙公営制度(自動車の使用及びポスター作成の公営)における
 不正請求問題調査報告書の写し(山県市挙公正制度における不正請求問題調査委員会作成)


5、別紙5:請求人が不正請求としてチェックを求めた愛知県議が、選挙カー燃料代の
  不正請求を認めて返還したことを報せる新聞記事の写し  




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