豊橋市議会議員選挙公営費返還請求事件
訴 状
平成19年10月10日
名古屋地方裁判所 御中
原告 寺本 泰之
〒441-1101
豊橋市賀茂町字石城寺4−6
被告 豊橋市 被告代表者
豊橋市長 早川勝
処分行政庁
豊橋市長 早川勝
〒440-0801
豊橋市今橋町1
請求の趣旨
1、被告は、甲第1号証に記載されたT会社が、不当利得した1,077,300円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払うように請求せよ。あるいは早川勝もしくは本件支出に権限のある職員に対して不当・違法に支払った1,077,300円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
2、 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。
請求の原因
第1 当事者について
1. 原告は、愛知県豊橋市賀茂町字石城寺4-6に居住する住民である。
2. 被告は、豊橋市長早川勝(以下、「被告」という)である。
3. 原告が被告に対して、不当利得返還請求するよう求める相手方は、2003年執行の豊橋市議会議 員選挙において選挙公営制度におけるポスター代の公費負担を請求した印刷業者である。
第2 住民監査請求前置と本件提訴について
原告は、2007年9月21日、豊橋市監査委員に住民監査請求したが、監査委員は同年10月5日付で却下の決定をし、結果通知(甲第2号証)してきた。 その要点は、本件監査請求が行為後1年を経過してなされており、地方自治法第242条第2項に規定する要件を欠き、不適法であるので却下する、というものである。
原告は上記監査結果には全く納得できないので、本件提訴する。
納得できないとする、監査委員の判断の誤りについて次に述べる。
監査委員は「本件監査請求の対象となっている選挙運動用ポスター作成費用の支出は、平成15年5月30日に通常の財務会計行為により行なわれ、秘密裡に行なわれたものではなく、情報公開制度等により相当の注意力をもって調査したとき、客観的にみて当該行為を知りえなかったとは判断できない」という。
@ 選挙の収支報告書は閲覧されている。しかし、費用明細書は豊橋市に対して開示請求しなくてはみ ることはできない。
原告は、平成19年6月19日に「平成19年度選挙運動用ポスター作成費用明細書」を開示請求し、 平成19年6月25日に「平成15年度市議会選挙ポスター作成費用明細書候補者全員分」を豊橋市 に対して開示請求した(甲第3号証)。
A 原告は、平成19年度の当該明細書に両面テープとその貼り代が請求されていることに疑問を持ち、 平成15年度の開示請求に及んだ。
B T会社の選挙運動用ポスター費用明細書(甲第1号証)の平成15年度と平成19年度を見比べれ ば明らかなように、平成15年度には材料代として「用紙・梱包資材・発送代等」と一括して請求している 。したがってここからは用紙代・梱包資材・発送代を個々に知ることは出来ない。平成15年度に開示請 求したところで本件の違法性を指摘することはできない。平成19年度の費用明細書において材料費の 項目に用紙代が14,000円と書かれていた。この数字を見てはじめて原告は公費請求の違法性を知 ることができた。
C 本来監査委員は地方公共団体の事務の執行を厳しく監視し、住民の利益のために機能するべき機 関である。ところが豊橋市監査委員は、本件監査請求に内容を審議することなく、平成15年度の支払 い年月日だ、というだけで機械的に今回の結果を出している。
D 監査委員の任務である、地方公共団体の財務及び事業の経営が「最少の経費で最大の効果をあげ るように行なわれているか」注意を払わなければならない、とする地方自治法199条3項に則った機能 を、豊橋市監査委員は果たしていないことは明らかである。
第3 本件支出の違法性について
1、豊橋市では、「豊橋市議会議員及び豊橋市長の選挙における選挙運動用自動車の使用及び選挙運動用ポスターの作成の公営に関する条例」(甲第4号証)に則り、選挙公営費が支払われる。選挙用ポスター作成費の公営負担請求の流れは次のようになっている。
@ 豊橋市議会議員における選挙運動用ポスターの作成の公費負担請求に際して、ポスター
作成業者は選挙の期日後速やかに(5日以内)豊橋市長あてに選挙運動用ポスター作成 費を請求する。この場合、請求書(選挙運動用ポスターの作成)に請求内訳書、選挙運動 用ポスター作成証明書及び選挙運動用ポスター作成枚数確認申請書を添付しなければ ならない。加えて選挙運動用ポスター作成費明細書(以下作成費明細書、という)に企画 費、材料費、撮影費等を書いて提出することが義務づけられている(甲第5号証)。
2、 本年(平成19年)度執行された豊橋市議会議員選挙でポスター作成業者であったT会社の作成費明細書は
甲第1号証の通りである。候補者6人のポスターを作成している。その作成費明細書のうち項目の材料費(用紙
ザ・ポスター 菊/140K)の金額は14,000円
となっている。ところが平成15年度の明細書(甲第1号証)には材料代(用紙・梱包資材・発送代等)は193,550円と
なっている。竹田印刷は平成15年度も同じく上記6人の候補者のポスターを作成している。
3、 市場単価を原告が調べたところ、用紙代は14,000円が妥当であった。「梱包資材・発送代等」としているとしても
主たる経費内容は用紙代にあるといえる。そこから差し引きすると平成15年度は「梱包資材・発送代」に180,000
円近い経費が掛かったことになる。梱包資材と発送代に180,000円の経費が掛かったとするのは、明細書の記載に
偽りがあることは明らかである。また 発送代は選挙用ポスター作成公費負担には認められていない。
そこから平成15年度に執行された豊橋市議会議員選挙の選挙用ポスター公営費の支払いに以下4,5,6の不当、違 法な支出があったことが明らかになった。
4、 作成費の公営負担の手続きは、提出された契約書を選挙管理委員会等が確認したうえで公費が支払われる規則に
なっている。そのとき真実と異なる金額を記載して契約書が提出されていたならば、私文書偽造罪にあたる。竹田印刷
の本件行為はそれに該 当する。水増しして請求していたならば詐欺罪(刑法第246条第2項)にもあたる行為である。
5、 竹田印刷へ支払われた公金は、真実に基づかない契約書によって支払われている。地方自治法2条、「16項 地方
自治体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反
してその事務を処理してはならない」「17項 前項の規定に違反して行なった地方公共団体の行為は、これを無効とす
る。」とされているが、本支払いはこれに該当する。
6、 本来負担すべき必要のない費用を過払いしたことになる。
過払い金額は候補者一人につき
193,550円−14,000円=179,550円となる。
6人の候補者のポスターを作成していることから179,550円の6倍の1,077,300円が違法な支出となる。
以上4、5,6より被告ないしすべての上記支出手続き担当者らが違法・不当な公金支出を行ったことは明らかであるし、竹
田印刷が真実ではない金額を明細書に記入して違法・不当に公金を受け取ったことは明らかである。
第5 結び
本件住民監査請求及び住民訴訟は、単に実際かかった作成費より高く請求して許せない、という話ではない。これから議員になって、行政の無駄遣いをチェックしようとする人が、最初の一歩から税金を不正に受け取るということである。そのような議員に行政のチェックができるとは考えられない。年金、談合、裏金問題等々あらゆる政官の不祥事は議会の機能不全から来ている。議会制民主主義の根幹を揺るがす問題である。 梱包資材と発送代に180,000円近くが掛かるはずがない。市場を調査すれば一目瞭然である。明細書記載に嘘の金額を書き、違法に公金を受け取ったのは明らかである。 行政に提出する契約書に嘘を書いても通る、ということがあってはならない。嘘の金額に対して住民の税金がやすやすと支払われるというような、こんなことが法治国家において許されてはならないのである。 以上の理由から本件住民監査請求及び住民訴訟は適法な請求である。
添付書類
訴状副本 1通
甲号証写し 各1通
参考資料
本件に関連する新聞記事
証拠方法
甲第1号証:平成15年度及び平成19年度の豊橋市議会議員選挙におけるT会社の選挙運動用ポスター費用明細書の写し
甲第2号証:本件住民監査請求書とその監査結果の写し
甲第3号証:平成19年6月19日及び同年6月25日に原告が行なった公文書公開請求書の写し
甲第4号証:「豊橋市議会議員及び豊橋市長の選挙における選挙運動用自動車の使用及び選挙運動用ポスターの作成の公営に
関する条例」(豊橋市のホームページより印刷したもの)
甲第5号証:豊橋市から配布される「選挙公営の手引き」の一部(写し)
他、口頭弁論で証拠を提出する。
訴訟物の価格 算定不能
転用印紙類 金 13,000円
添付郵券 金 6,700円