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事件番号 平成24年(行ウ)第144号 公金支出差止請求住民訴訟事件

原告 寺本泰之

被告 豊橋市長 佐原光一

 

意見陳述書

平成25年4月1日

原告 寺本 泰之

 

 私は還暦を迎える平成19年に豊橋市議会選挙に立候補し当選、現在2期目を努める豊橋市議会議員です。議員になる前は建材業を営んでおりました。立候補の目的は行革です。そのきっかけとなったのが、自宅前の菖蒲園に建てられた3坪ほどの公衆トイレの建築費が建物だけで3600万円もしたからです。私の積算では1000万円以下でできます。

 さて、本件で問題にしました被告が行った総合評価落札方式のもう一つの例を紹介します。平成23年7月7日開札で配水管工事(牛川町)の入札が行われましたが、被告は入札に参加した全業者を失格としております(資料1−1)。一番安く千代田工業株式会社が5990万円で入札、4社が6000万円代、また一番高く新日本工業株式会社が8865万8千円で入札しておりますがいずれも失格判断基準価格以下で失格です。この入札からは失格判断基準は9000万円位と想定されます。したがって予定価格は1億3千万円になります。もし千代田工業株式会社が1億2千万で入札していたら落札者になります。通常利益+6000万円のプレミアム利益を得ることになります。
 配水管移設工事は必要なので2ヵ月後に同じ設計書、仕様書で、なぜか現場を二つ(下条、小鷹野)に分けて予定価格を下げて再入札を行っています。2ヵ所あわせた落札価格は7700万円でした(資料1−2)。いかに予定価格がいい加減なものかがわかります。その予定価格を基準として失格判断基準が設定されています。このような制度によって資格、実績のある入札業者の入札価格をダンピングと決め付けられて一律失格とされています。

役所が設定した価格にそぐわなければプロの業者が積算した価格は無視されて、契約履行の可否も調査されず失格にしてしまう。公正な競争原理がまったく機能しない入札制度です。経営改善やイノベーションによって、低いコストで工事を請け負う努力をしても、これでは業者は報われません。業者は発注者の顔色を伺うことになります。評価点数にしても公共工事に限り(財)日本建設情報総合センター・コリンズ・テクリスセンターに報告した直近2年間あまりの実績回数が加算対象です。民間の仕事をどれだけ請け負っていても加算対象にならないのです。

 昨年10月、公正取引委員会は国土交通省四国地方整備局や高知県発注の総合評価落札方式による公共工事入札を官製談合と断じ、国交相に対し官製談合防止法に基づき改善措置要求を出した事件がありました。この事件について朝日新聞は次のように報じています。
 「一方、今回の事件で業界側から疑問の声が上がっているのが『総合評価落札方式』と呼ばれる入札のあり方だ。ある県内業者は、同方式を『諸悪の根源』と言い切る。点数の悪い業者は、低価格で入札に臨んでも落札できないうえ、業者にとっては加点の基準が曖昧に移るという。今回のように点数を特定の業者がつかんでいたら、他の業者は従わざるを得ない。価格だけで競う方が談合はできないのだが」

 そして価格競争も封じているのが、被告の行う失格判断基準制度です。

工事の監督、検査も数回資格ある職員が行なうことになっています。本来予定価格も失格判断基準も目安にすべきものです。最低制限価格も目安にすべきです。この制度によって納得できない入札結果がでています(資料3)。その一部、8件を添付します。

 今年1月、薬のネット販売規制は「違法」の最高裁判決が出ました(資料2)。安易な規制で営業の自由を奪うな、との判決でした。この判決は本件工事入札における失格判断基準にも通じます。安易な基準を設けることで、がんばった企業が報われず、また税金のムダ使いで国民に不当な負担を課しています。契約履行の可否の調査もせず一律に失格とする価格統制的制度は一刻も早く廃止すべきです。