豊橋市職員措置請求書
1、豊橋市は平成24年7月30日に「植田小学校北校舎大規模改造等に伴う電気工事(以下「本件工事)という」の入札を行なった。本件工事入札は総合評価落札方式一般競争入札で行われ、12社が参加した。結果は表(1)の通りであった。
@、豊橋市財務部契約検査課作成の入札結果(事実証明書1)と総合評価一般競争入札結果(事実証明書2)から請求人が表にまとめた。総合評価は財団法人「日本建設情報総合センター、コリンズ・テクリスセンター」が、豊橋市に委託されて行った。 A、事実証明書2に記されていない評価値は、豊橋市総合評価競争入札実施要領(事実証明書3)第7条に基づき請求人が行なった。 B、「順位」は、上記Aに基づく順位である。 2、本件工事入札の違法性について @ところで、「総合評価落札方式」は、従来の価格のみによる自動落札方式とは異なり、「価格」と「価格以外の要素」(例えば、初期性能の維持、施工時の安全性や環境への影響)を総合的に評価する落札方式であり、具体的には入札者が示す価格と技術提案の内容を総合的に評価し、落札者を決定する落札方式です(国土交通省国土技術政策総合研究所 総合技術政策研究センター 建設マネジメント技術研究室より)。 A、豊橋市の「総合評価落札方式」は「低入札価格調査制度」を設けている。この制度は、工事の請負契約における履行の確保及び不良・不適格業者の排除を目的に調査基準価格を設定して、調査基準価格を下回る価格で入札した者には落札を保留し、その入札価格で当該工事の履行が可能かどうかを調査及び審査した後、落札者を決定する制度であるが、豊橋市は更に失格判断基準なるものを設け、調査基準価格を下回った価格で入札した者を失格判断基準の対象としている。つまり「失格」としている(事実証明書5)。この制度は実質的には「最低制限価格制度」であり、「最低制限価格実施要領」第2条に違反している。 B、本件工事入札では、総合評価落札方式を用いながら評価値の一番高い業者である愛豊電気(株)を調査することもなく失格とするばかりでなく、総合評価で評価値が9社中7位の業者である(株)三立を落札業者とした。本件工事入札は「総合評価落札方式」の目的を逸脱し「最低制限価格実施要領」第2条に違反した入札と言える。 C、本件工事入札は、本来なら総合評価により評価値の一番高い愛豊(株)が落札されるべき契約であり、落札額は24,823,000円となる。しかし落札した業者は評価値(株)愛豊より低く、入札金額も4,377,000円も高い29,200,000円の(株)三立を落札業者とした。愛豊(株)は総合評価値が一番高い業者であるから、当然契約内容を履行できる業者であるのに、愛豊(株)を契約履行の可否も調査せずに失格としている。失格とする合理的理由もなく、著しく不適正な契約がされている。この事実は、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」第3条の1及び2(事実証明書6)に違反している。 以上より本件工事入札は、地方自治法第2条第14項に定める「最少の経費で最大の効果」及び地方財政法第4条第1項に定める「その目的を達成するための必要且つ最少の限度」に反し、違法な公金の支出に該当するので、以下の措置を求める。 【求める措置】 監査委員は、 1、本件工事契約で株式会社三立への支出のうち、4,377,000円は違法な支出であるので差し止めを市長に勧告すること。 上記の通り、地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。 豊橋市監査委員 殿 平成24年10月 5日
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意見陳述 平成24年10月24日(水) 請求人 寺本 泰之 今回監査請求しました「植田小学校北校舎大規模改造等に伴う電気工事」につきまして陳述いたします。 本件工事は総合評価落札方式の一般競争入札でしたが、落札したのは評価が一番高いところではなく9社中7番目の業者でした。これは明らかに総合評価入札方式の目的から逸脱した結果であり、正常な評価機能は働いていないと断言します。不当に行政が介在した入札と考えられます。以下、不当とする理由を述べます。 1、豊橋市は、最低制限価格制度や失格判断基準の導入の概ねの理由を「総務省及び国土交通省からの要請があり、公共工事における品質の確保、契約の履行が可能であること、ダンピングの排除のため」としております。この件で請求人が国土交通省に電話で問い合わせましたところ「目的とする公共工事における品質の確保、契約の履行が可能であること、ダンピングの排除については国も地方も同じだけれども最低制限価格制度や失格基準は国にはない。地方にはこれらの制度を導入しているが、決して導入しなければならないということではない。地方の実情に合わせて導入する、しないは地方自治体で判断すればよい」ということでした。 つまり、地方自治体は地方自治法第2条14項「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」に則り事務の処理を行うことが正当な事務の処理である、ということです。 2、本件工事は総合評価落札方式の一般競争入札で行なわれました。この総合評価方式とは監査請求書にも書きましたが「価格だけではなく技術や企業のノウハウを評価し評価点と価格から評価値をつけて、その最も高い評価値の業者が契約者となる」方式です。本件入札において総合評価委員会が最も高い評価値をつけた業者は(株)愛豊でした。ところが評価値7番目の(株)三立が落札業者になっています。 それでは(株)愛豊は前述した「公共工事における品質の確保、契約の履行が可能であること」に当てはまらない業者なのであろうか。それは絶対にあり得ない話です。なぜなら総合評価で一番高い評価値を獲得した業者だからです。 また、ダンピングの懸念についても、9社中6社のプロの業者が100万程度の差額で見積もっているのですからダンピングは考えられません。 3、地方自治法施行令第167条の10の2では「価格その他の条件が当該普通地方公共団体にとって最も有利なものをもって申込をした者を落札者とすることができる」と定めています。本件工事入札において総合評価値が一番高く且つ一番安い価格で入札した(株)愛豊を落札者にすることが最も豊橋市にとって有利であることは誰もが納得する明白な事実です。 ところが豊橋市は(株)愛豊を落札者とせず、それよりも470万円も高い価格で入札し、尚且つ評価値も7番目の(株)三立を落札者としました。この行為は地方自治法施行令第167条の10の2に違反し、地方自治法第2条14項に違反します。 4、本件工事入札は、入札参加者の6割が失格するという異常な入札結果から、正常な失格基準価格が設定されていなかったと判断すべきです。予定価格が実勢価格と乖離しており、適正な価格設定がされていなかったと解すべきです。問題はこの失格基準価格設定にあります。 この失格基準価格なるものが市場競争原理を阻害しているということです。企業努力して安く見積もって入札しても失格となっては、業者は企業努力して安く積算する意欲を失います。一方で税金はムダに多く支払われることになり住民に無駄な負担を強いることになります。 実勢価格から乖離した一方的な失格基準価格を定めて失格とするのは、競争原理を剥奪した違法な行政の価格統制行為と言わざるを得ません。 豊橋市のここ1,2年の「失格」が並ぶ入札結果を提出します(資料1)。この事実を豊橋市はどのように認識しておられるのでしょうか?国交省の言う「地方の実情に合わせた制度」には決してなってはいません。 地方自治法の基本精神に則った判断を監査委員のみなさまにはお願い申し上げます。
提出資料1:豊橋市における入札結果 |